介護が原因で腰痛になる前に!腰痛予防のポイントと簡単ストレッチ

介護をするうえで悩みになりやすい『腰痛』は、一度なってしまうとなかなか治りづらくて辛いですよね。「介護をしていたら腰痛になるのは仕方ない」そんな風に思っていませんか?
確かに、介護のプロである介護士でも腰痛の悩みを抱えている方は多くいます。その一方で長く介護に携わっていても腰痛にならない方もいるのです。
その違いはどこにあるのでしょうか?
そこで、この記事では、自宅で介護を行っている方向けに
- 腰痛になりやすい姿勢
- 腰痛を防ぐ介護ポイント
- 自宅でできる腰痛予防
について、まとめて紹介します。
どれも簡単に実践できることばかりですので、今日からは腰痛の軽減&予防をして、無理のない介護をしていきましょう。
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目次
1.腰に負担がかかりやすい姿勢

介護のなかでも腰に負担がかかりやすい姿勢と動作は以下の4つです。
- 前かがみ・中腰(おむつ交換・体位交換など)
- 腰のひねり(食事・入浴の介助など)
- 長時間同じ体勢(入浴介助など)
- 持ち上げる(起き上がり・移乗介助など)
また、特に腰痛が起こりやすい作業は以下の2つです。
- 入浴介助
- 移乗介助
ベッドから車いすへの移乗やおむつ交換、食事・入浴の介助など、介護で腰痛になりやすいのは中腰や前かがみでの作業が多いから。
また長時間同じ姿勢で作業をしていて、急に動きを変えようとするときにも腰を痛めやすくなりますし、筋肉の疲労がたまると慢性的な痛みを感じるようになります。
さらに、長期的に腰への負担がかかり続けると何気ない動作が引き金となり「ぎっくり腰」と言われる急性腰痛症を引き起こす原因にもなります。
2.腰痛にならないための介護のポイント

この様に介護では腰痛の原因となる作業が多くありますが、姿勢や動きを意識することで腰痛のリスクを減らすことができます。
また、原因となる環境などを見直すことで腰への負担を軽減したり、こまめなストレッチで疲労をためないなど、身体のメンテナンスをすることも大切なポイントです。
2-1 常に意識することは“垂直に落とす”“スライドさせる”
腰に負担がかかりやすい姿勢を踏まえ、効果的な介助姿勢について2つのポイントをご紹介します。
無理な姿勢での介助をやめることで身体的負担を軽減します。
1.両足を肩幅に開き、重心を垂直に落とす
介助をするときの基本は、足を肩幅くらいに開き、膝を曲げて身体の重心を垂直に落としましょう。
腰を曲げて前かがみになるのではなく、重心を低くすることで、体制が安定して、腰に余分な負荷がかからなくなります。
(足の幅を開きすぎるとねじれやすく、かえって腰を痛めることがあるので要注意)
前傾姿勢にならなくてはできない作業の時には基本は同じく、足を肩幅に開いたら姿勢は垂直を意識して、お尻を後ろに引く(突き出す)姿勢になると負担を軽減することができます。いずれも腰や背中を曲げず、垂直に姿勢を保つことを意識します。
また、食事など椅子に座って介助する場合でも、背中を曲げたり身体をひねったりせず、介助を受ける方に対して正面に向き、垂直に腰かけることが大切です。
2.移乗は「持ち上げる」のではなく「スライドさせる」
ベッドから車いすへの移乗や入浴の介助など、持ち上げて移動させる動作が必要なときは、基本の姿勢で、縦に持ち上げるのではなく、横にスライドさせるというイメージで行うと負担を軽減できます。
縦に持ち上げると腰への負担がかかるうえに、転倒などのリスクもあります。
ベッドから車いすへの移乗なら、車いすをなるべくベッドに近づけ、基本の姿勢をとり体制を安定させたら、介助を受ける方の身体をスライドさせます。
また、なるべく介助を受ける方に近づいて自分との重心を近くすることもポイントです。
身体を“垂直に落とす”“スライドさせる”コツを掴んで慣れてきたら、さらに身体機能にあわせて少ない力で支えたり動かしたりすることができる介護技術『ボディメカニクス』を実践してみるのもおすすめです。→【動画付】「ボディメカニクス」とは?介護のプロが簡単解説
2-2 環境を整え介護サポート用品を活用する
前章では、腰痛になりにくい介助姿勢についてご紹介しましたが、介護では、どうしても持ち上げたり、前かがみにならざるを得ないことが多くあります。
なるべく腰への負担を軽減するために、環境を整えたり、サポート用品を活用することをおすすめします。
1.環境を整える
ベッドの高さが低いとどうしても前かがみでの作業が多くなるため、ベッドの高さを調整しておくことが必要です。また、同じ姿勢での作業が多くならないように、可能な限りベッドの左右にスペースをあけて、両側から作業できるようにしておきます。
さらに、滑りやすい場所や狭い場所などは無理な姿勢での介助になります。整理整頓をして十分なスペースを確保することや、床を滑りにくくする工夫をする、部屋の温度や照明の明るさを適切に保つなど、介護しやすい環境を整えましょう。
2.腰痛対策ベルトやコルセットをつける
腰の痛みが辛い場合には、応急処置として腰痛対策ベルトやコルセットを使ってみるのも一つの手です。
ただし、腰痛ベルトなどは、身体を支える筋肉をサポートして、痛みの出る姿勢を取らない様にするもので、正しく装着しないと効果がありません。
また、素材や幅、サイズなども自分に適したものを選ぶことが必要です。不安な場合は整形外科で処方してもらうことをおすすめします。
なお、ベルトやコルセットはあくまでもサポートするもの。
日常的に着用していると筋力が弱ってしまうので、必要な時にサポート的に使用するのがよいでしょう。
3.福祉用品を活用する
自宅の環境や介護状況などにあった福祉用具を上手に活用するのもおすすめです。
ベッドや車いすを持ち上げずスライドして移動できる移乗シートやボード、介護用ベッド、多機能車いす、電動リフトなどの福祉用具は、介護保険を使用してレンタルすることができます。まずは、ケアマネジャー(介護支援専門員)に相談してみましょう。
4.訪問入浴、デイサービスを利用する
腰への負担に加え疲労も大きい「入浴介助」。
腰痛の悪化や疲労感の強い時などには、訪問入浴サービスを利用してみるのもおすすめです。
費用は介護度や内容により異なるのでケアマネージャーに相談してみましょう。
また、デイサービスでも送迎つきで食事や入浴、レクリエーションのサービスが受けられます。
毎日の介護から解放され、リフレッシュすることも、自宅で介護を長く行っていくうえでは大切なことです。介護サービスを上手に活用してみましょう。
2-3 できることは自分でしてもらう“自立支援”
介護はすべてやってしまうのではなく、本人ができる範囲のことは自分でしてもらうことも大切です。
介護の負担が減るのはもちろんですが、介護される方の自立支援にもつながるからです。
例えば、
- 脱衣は可能な限り本人が行う(できない箇所のみサポートする)
- 足の力が残っていれば自分で立ってもらう、浴槽をまたぐ
- 短い距離の移動は手すりを使って歩く
- 簡単な家事の手伝い(洗濯・料理)をしてもらう
など。
ただし、できる範囲を超えて無理にさせようとするとストレスにつながるので、本人の状態やその日の体調などにあわせて無理のないようにしましょう。
3.自宅で簡単にできる腰痛予防ストレッチ

腰痛の原因は様々ですが、身体が硬いと腰痛を引き起こしやすくなります。
適度なストレッチを行って筋肉を柔らかくすることは腰痛予防に有効です。
ここでは自宅でできる簡単なストレッチをご紹介します。
3-1 介護の前後、疲労回復に自宅で簡単ストレッチ
ストレッチは、身体があたたまっている入浴後や就寝前に行うのが効果的ですが、ケガの予防や疲労回復、リラクゼーションの効果もあるので、介護の前後や疲労を感じた時など、気づいたときにこまめに行ってみてください。
伸びる筋肉を意識しながら気持ちいと感じる範囲でゆっくり行うのがポイントです。
1.太ももの前側を伸ばすストレッチ
- 片方の手を壁やいすの背もたれなどに置いて身体を安定させます
- もう片方の手で足の甲をもって膝を曲げ、つま先がお尻につくイメージで持ち上げます
- 太ももの前側が気持ちよく伸びるのを感じながら20~30秒キープ
- ゆっくりと元に戻し、反対側も同様に行いましょう
※左右それぞれ1~3回ずつ行います

2.ももの付け根とふくらはぎを伸ばすストレッチ
- 椅子や壁に手をついて、両足を前後に開きます
- 腰を落とすようにして太ももの付け根をのばしましょう
- さらに、かかとを床につけてふくらはぎを伸ばします
- 気持ちよく伸びているのを感じながら30秒キープ
- ゆっくりと元に戻し、反対側も同様に行いましょう
※左右それぞれ2~3回ずつ行います

3.体側を伸ばすストレッチ
- 両手を頭の上で組んで、息を吐きながら真横に倒します
- わきの下からからだの側面を伸ばします
- 気持ちよく伸びているのを感じながら30秒キープ
- ゆっくりと元に戻し、反対側も同様に行いましょう
※左右それぞれ2~3回ずつ行います
※椅子に座ったり、手すりや壁を使って行ってもOK

4.寝ながらできるお尻と腰をのばすストレッチ
- 仰向けになり両膝を立てます
- 片足をもう片方の太ももに4の字に組みます
- 組んでいない方の太もも裏に手を組んで息を吐きながら身体に引き寄せます
- お腹の力を抜いて、お尻や腰が伸びるようにします
- 気持ちよく伸びているのを感じながら20秒キープ
- ゆっくりと元に戻し、反対側も同様に行いましょう
※左右それぞれ1~3回ずつ行います。


この他にも、「ふう~」と息を吐きながら大きく伸びたり、前屈をするだけでもストレッチになります。
いつでも手軽にできるので、習慣にしながら、心地よくリフレッシュしてくださいね。
3-2 ちょっとした心がけで腰痛予防になる生活習慣
腰痛になりやすい人は、介護の負担以外にも、腹筋や背筋、太ももの筋肉などが弱まり、猫背や反り腰など日常的に姿勢が悪く腰に負担をかけていることがあります。
また、介護は同じ動きが多く、身体の使い方が偏りがちになります。そのため、普段から正しい姿勢を意識する、こまめに身体を動かし持久力や筋力をつけることも大切です。
正しい姿勢と動作を意識する
<立ち方>
・あごを引き、背筋を伸ばす
・下腹とお尻に力を入れ、真っ直ぐに立つ
(横から見たときに、耳・肩・腰・膝・くるぶしが地面から垂直に一直線に伸びたような姿勢)

<座り方>
床に座る場合
お尻の下に座布団などを敷いて腰を高くする
椅子の場合
脚が床につき、腰がほぼ直角に曲がる高さの椅子に背筋を伸ばして座る。
また、クッションなどの腰当てで調整する。
<物を持ち上げる>
しゃがんで、できるだけ物を身体に近づけて膝の屈伸を使って持ち上げる。
(※決して腕だけで持ち上げない)
<低い姿勢になる時>
中腰ではなく腰を落として(しゃがんで)から行う。
車いすのフットレストを上げる時も、座るか、膝を曲げて行うようにする。
全身運動を続ける
テニスやサイクリング、水泳などはよい全身運動になります。
また、ジムやスイミングなどに通わなくても手軽に取りいれることのできるウォーキングは、全身運動としても効果的でおすすめです。
重要なポイントは、正しい姿勢で無理なく毎日続けることです。
ウォーキングのポイント
1.歩く前に正しい姿勢で立つ(前章の<立ち方>を参照)
2.目線は遠くを見るように前を向いてアゴを引く
3.やや大股の歩幅で、かかとから着地し、つま先で蹴りだすように歩く
4.肩の力を抜いて腕を大きく振る
5.1日15分~20分(汗ばむ程度)

日々の生活の中でもなるべく、背中を丸めない、目線を上げる、正しい姿勢で歩いてみるなど、簡単なことで姿勢を改善することができます。
意識して、丈夫で痛めにくい腰をつくりましょう。
さいごに

いかがでしたか?
腰に大きな負担がかかる介護も、姿勢を意識したり、身体のケアをすることで、腰痛を予防したり緩和することができます。
無理なく介護を行うことは、介護を受ける方の負担や事故などのリスク低減にもつながります。
腰痛の症状が出てしまう前に、また悪化させないために、ぜひ意識して取り組んでみてください。
※当該記事に関する個別のお問い合わせは受け付けておりません。また、記事中の触れられている法的見解についての責任は一切負いかねます。所管の自治体窓口または弁護士などの専門家にご相談ください。「そよ風」のサービスに関してのお問い合わせや不明点は、お問い合わせフォームより受け付けております。
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